ア行
アオダモ(青ダモ)
モクセイ科:広葉樹(落葉)
5月頃、白いふわふわした花を咲かせます。遠くから見るとこの地方(岐阜、愛知、長野南部)だけにある「ナンジャモンジャ」の花に似ていますが「ナンジャモンジャ(ヒトツバタゴ)」は自生しているのを見つけるのは非常に困難とのことで、たいていはこの「アオダモ」か「マルバアオダモ」でしょう。
葉はモクセイ科によく見られるように奇数の羽状複葉で3~7枚の小葉になっています。「マルバアオダモ」は文字通り葉が丸いと思われがちですが、葉の縁が丸い(滑らか=全縁)ので「マルバ」が付いています。「アオダモ」の葉は鋸歯が見られ、この点で区別がつきます。「タモ」ほど大きくならず10m前後までですが材はタモ同様硬く、太いものはバットなどに使われます。
アオハダ (青膚)
モチノキ科:広葉樹(落葉)
雌雄異株の落葉樹です。木の名前からそれがどんな木なのか想像できることがよくありますが、この木もその1つで木肌が青いところから名が付いています。ただし一番外側の樹皮ではなく、その下の内樹皮が緑色をしているためです。緑色なのに「青信号」と呼ぶように日本人は緑色のことを古来から「アオ」と表現しますが、これもそのようですね。「キハダ」はかなり高木に成長し太くなるので材としても重宝され、内樹皮も黄檗として漢方薬に使われるのに対し、「アオハダ」は8m程度にしか成長せず、あまり太くなりませんが材としては硬いので木工などに使われます。
アカガシ (赤樫)
ブナ科:広葉樹(常緑)
「アカカシ」は材の色が赤みがあることが名の由来です。常緑高木で、幹はまっすぐ立って枝や葉がよく茂るので写真写りの良い木です。樹皮は灰黒色ですが、木によって色々な斑模様ができるので、山で出会うと、しばしば「この木、何の木?」になってしまいますが、葉の鋸歯(縁のギザギザの部分)がないため他のカシと区別できます。新緑の時には明るい緑の新芽を出すので、そのことも判断の材料になります。国産材の中では非常に重くて硬く、強度があり、水にも強いため、船舶や車両、またカンナ・かなづち(柄の部分)などにも使われます。
アカシデ (赤四手)
カバノキ科:広葉樹(落葉)
この辺りの雑木林ではよく見られ、「クマシデ」「イヌシデ」が黄葉するのに対し、名の通り赤く色づき、また新芽も赤いことが名の由来のようです。他のシデと同様、樹皮には「シデ目」と呼ばれる縦じま模様が見られますが、葉が小さく、また側脈も約半分の10対ほどです。葉は小さいですが樹高は他のシデと同程度の15m前後に成長します。当社山林ではよく見かける落葉高木です。(他のシデも合わせて説明した「シデ」の欄もご覧ください。)
アカマツ (赤松)
マツ科:針葉樹(常緑)
「松」と言えばこのアカマツを指すことがことが多いと思います。「杉」と同様、日本人の苗字で「松本」「松井」「松下」など「松」が付く苗字は数多くあり、それほどマツは日本人にとって身近な存在であったことがわかります。天然のアカマツは尾根など乾いた土地に多く見られます。数年前まで近辺の山でも松くい虫などの被害が猛威をふるっていましたが、今では少し落ち着いたようです。材は古来から建築材料に用いられ、構造材(梁や桁の部分)、床材、鴨居、敷居、造作材に多く使われます。脂(油分)が多く火力が強いため陶芸の燃料としても使われています。
アカメガシワ (赤芽槲)
トウダイグサ科:広葉樹(落葉)
林道の開設後や崩壊地にもいち早く先駆植物として進出してきます。コンクリートの隙間の僅かな土壌からも芽吹いているのを見ると繁殖力も強いようです。名の通り新芽が赤くなるため5月頃には他の木との区別がつきやすく、一目でわかります。葉は日光を少しでも多く受けようと上から見ても横から見ても重ならないように下の葉ほど葉柄が長く伸びています。高木ではありますが最大でも10mぐらいにしか成長せず、枝分かれが多く幹も太くならないため木材価値としてはあまりありません。
アサダ (浅田)
カバノキ科:広葉樹(落葉)
この木は当社山林ではあまり見かけません。しかし、1本あるとその周辺には何本か発見することが多いようです。種子はあまり遠くに運ばれないのかもしれません。灰褐色の樹皮だけ見ると、まるで針葉樹のようで、浅く剥がれるような裂け目があります。加工がやや難しいですが強靭な材です。敷居、床板、家具、器具などに用いられます。
アスナロ (翌檜)
ヒノキ科:針葉樹(常緑)
木曽五木(ヒノキ、ネズコ、サワラ、マキ、アスナロ)の一つです。この木も地方によって「アテ(石川県)」、「アスヒ(当地方)」など呼び名が変わりますが、「アスナロ」の名は「明日はヒノキになろう」というのが俗説です。当地方での「アスヒ」の名も同様の意味のようです。有名な「青森ヒバ」はこれの変種です。
写真からもヒノキに似ていますが、樹皮が薄く捲れあがるように剥がれること、葉がヒノキより大きくて厚いことなどから違いがわかります。葉の裏側もヒノキは細く白い「Y」の文字のように見え、アスナロは漢字の「小」またはカタカナの「ハ」が二つ重なったように見えます。当社山林ではヒノキの天然林に混在して尾根筋によく見られます。材質もヒノキに似て独特の芳香があり、建築材や桶、家具などに利用されますが「ネズコ」ほど高級材扱いされないようです。
アセビ (馬酔木)
ツツジ科:広葉樹(常緑)
常緑の小高木なので、冬枯れした山林に入ると高木の下層木として見つけることができます。材木としての価値はほとんどありませんが庭園木などに使われます。漢字では「馬が酔う木」と書きます。葉や花に毒があるため馬が誤って食べると酔ったようになることが由来ですが、本当に食べると酔うどころか泡を吹いて死んでしまうほどの猛毒だそうです。
アブラチャン (油瀝青)
クスノキ科:広葉樹(落葉)
この木がお好きな方には申し訳ないのですが、材木屋的見地から言えば、正直言って全く見栄えのしない木です。太い幹にもならず地面から何本も細い幹が、せいぜい3mぐらいの高さで群がって生えています。(そのため「ムラダチ」の別名があります。)ただ、クスノキ科に属すためか葉は快い香がします。実から油が採れ、また樹皮にも油分が多く燃えやすい(中国語で石炭などの燃料をチャンと呼ぶそうです)ため「アブラチャン」という可愛らしい名になりました。先が尖った卵型4~5cmの葉には鋸歯がなく(全縁と言います)互生です。