ア行
アベマキ (棈)
ブナ科:広葉樹(落葉)
西日本の里山では多く見られるドングリの成る木です。ただ名前はあまり知られていません。よく似たクヌギはクワガタ虫が好きな樹として有名ですが西日本にはほとんど自生していないそうです。クヌギとアベマキの区別はドングリの殻斗(モジャモジャの部分)の違いで判別できるほか、葉の裏側に細かい毛があるかないかで判別できます。毛があるのがアベマキです。深く裂け目のある表皮はコルク質が厚く押すと弾力があります。そんな樹皮の様子が「あばた」のようなので「あばたまき」が訛ったものがアベマキになったのだと言われています。材は重くて硬く、家具などにも使用できますがあまり出回っていません。薪ストーブ用の薪にも適しています。
アラカシ (粗樫)
ブナ科:広葉樹(常緑)
常緑高木で樹幹は直立するので見栄えのする樹種です。「アラカシ」とは葉の鋸歯が粗くて硬いことから由来しています。樹皮は裂目はありませんがざらざらしています。宮城県・石川県以南の暖帯林に生育し、当社山林でもふもとに近い場所に多く見られます。新緑時には茶色っぽい葉を付け、まるで枯れたかのように見えるのでカシの仲間でも区別がしやすい木です。他のカシと同様、非常に硬く重い材質なので強度はありますが加工が難しい材です。
アワブキ (泡吹)
アワブキ科:広葉樹(落葉)
写真の木は樹高約8m。これ以上の樹高のアワブキは見当たらず、このくらいが最大のようです。樹高の割に葉が目立ち、20cmぐらいの大きな葉をつけます。葉質は薄く、秋には鮮やかに黄葉するので案外見つけやすい樹種でもあります。谷沿いの湿ったような場所で多く見られますが、材としてはあまり利用されることを聞いたことがありませんが、燃やすと文字通りシューシューと泡を吹き出します。
イイギリ (飯桐)
イイギリ科:広葉樹(落葉)
当地方ではこの木を「ケロ」と呼ぶ人もいますが、その語源はご本人に聞いてもわかりません。枝ぶりに特徴がありミズキと同じように枝が同じ場所から放射状に広がっています。樹皮はホオノキのように滑らかであまり特徴的な模様はありません。昔は飯をこの葉で包んだいたそうで、それがこの木の名の由来です。 雌雄異株(木によって雄雌が分かれる)で雌は初夏の頃、ブドウのような実をつけますが、秋になるとこの実が赤く色づき、落葉して冬枯れした林の中でもよく目立ちますのですぐにこの木とわかります。生食可とされていますが、なぜか動物もあまり食べないようで春先まで枝に付いているのを見ます。材としては白く柔らかいので桐の代用品として下駄などに使われる程度です。
イタヤカエデ (板屋楓)
カエデ科:広葉樹(落葉)
飛騨地方では「イタギ」と呼んでいます。カエデの中では葉が大きく切れ込みの数が少なく、紅葉せずに「黄葉」するのが特徴ですが、変異種も多く微妙に形が違うものがあります。北米にはシュガーメープル(サトウカエデ)というメープルシロップを採取するカエデがあります。イタヤカエデも樹液には糖分があり煮詰めればメープルシロップの代用品になります。カエデ類は日本ではモミジなどが観賞用として利用されますがイタヤカエデは材として利用される数少ない樹種です。材は白っぽく緻密で光沢があって美しいため、幅広い用途があり、特に家具やフローリングのほか、弦楽器などにも使われます。
イチイ(一位)
イチイ科:針葉樹(常緑)
イチイは別名を「アララギ」といいます。イチイの名前の由来はその昔、天皇即位の折にこの木で笏(しゃく)を作らせ、あまりの木目の美しさと見事な出来栄えに感激した事から、当時の最高位の官位を表す「正一位」を授かったと伝えられています。岐阜県の木にもなっており、年輪の幅が狭く材が狂いにくく加工しやすいため飛騨地方では「一位一刀彫」という工芸品が有名です。成長がとても遅く、20年経っても高さが5m、太さも5cmくらいにしかならないこともあります。秋にきれいな赤い実がなります。果肉は甘いのですがタキシンという強い毒がある種は食べてはいけません。摂取量によっては呼吸困難により死に至ることもあります。葉はモミやカヤに似て尖っていますが触っても柔らかく痛くありません。
イチョウ(銀杏)
イチョウ科:針葉樹(落葉)
生きた化石と呼ばれ、イチョウの仲間は約3億年前に出現しジュラ紀まで世界中で繁栄しましたが現在では一種だけになっています。全国に分布し、町中でも街路樹として植えられ東京都の木にもなっていますが原産は中国です。そのため山林ではほとんど見られません。イチョウはスギ・ヒノキなどとは大きくイメージが異なり、また秋になれば落葉するため広葉樹と思われがちですが、本来分類上は裸子植物であり針葉樹の一種です。葉の形がカモの足に似ているため中国語の鴨脚(ヤーチャオ)が訛って日本に来て「イチョウ」という発音になったとのこと。材は淡いクリーム色で程良い硬さがあるためまな板にも使われますが、雌雄異株のため雌材は個体差により、例の特有の匂いを発するものもあるので要注意です。実(種)は「ギンナン」と呼び食用になりますが、子供は食べ過ぎると食中毒を起こすこともあるので「年の数より多く食べてはいけない」という言い伝えがあります。
イヌブナ
ブナ科:広葉樹(落葉)
ニュース等を見ていますとイスラムの世界では「イヌ」という言葉で呼ばれた場合は相当侮辱的なように聞こえますが、日本でも木の世界では「イヌ」が付くとランクが下であるという意味のようです。「イヌブナ」も「プナ」より材質が劣るからというのがこの名の由来です。「イヌ」が付く木は他にも「イヌエンジュ」「イヌシデ」など結構ありますが、いずれもそのような意味から名が付いたようです。「ブナ」より標高の低い山地に成育し、樹皮の色がブナより濃いのが特徴です。葉もイヌブナは表面に毛が多く、側脈も11~13対(ブナは8~11対)で大型です。
イロハモミジ (伊呂波紅葉)
カエデ科:広葉樹(落葉)
普通、モミジといえばこのイロハモミジを連想するくらいポピュラーなカエデです。直立することが少ない木で、オオモミジに比べ葉がひとまわり小さく、生育地も標高のやや低いところで多く見られます。成長が遅く、当社近辺の道路わきに一緒に植えられたソメイヨシノが大木になっているのに対し、イロハモミジは人の背丈ほどにしか成長していません。しかし、なぜ「イロハモミジ」と言うのでしょうか。調べた結果、葉が裂けて分かれているのを端から順番に「いろはにほへと」と数えたことからついたのだそうです。
ウダイカンバ (鵜松明樺)
カバノキ科:広葉樹(落葉)
皮目がサクラやミズメによく似た樹皮は燃やすととても火力が強く焚き火などの種火になるため「鵜飼いの際の松明(たいまつ)」として使われたことが「ウダイ」の名の由来です。葉はハート型でかなり大きく10~15cmほどあります。岐阜県あたりが南限とされ、材は「マカンバ」あるいは単に「カバ」と呼ばれます。硬くて強く加工性に優れ、なおかつ反りや狂いも少ないため高級材として扱われますが、樹皮が似ているせいか、しばしば木材業界では「カバザクラ」などサクラ材の名前で取引されることがあるため同じ仲間と間違える人もいます。
ウラジロガシ (裏白樫)
ブナ科:広葉樹(常緑)
ブブナ科の常緑樹で、アラカシと同じような場所によく見られます。樹皮の表面は裂け目がなく比較的滑らかですが、葉はアラカシほど鋸歯が大きくなく、またほっそりしており名の由来どおり葉の裏が白いのが特徴です。葉はちょっとした風でもよくそよぐのでヤマナラシ同様、風のある日には写真の撮りにくい木です。