ハ行

ハウチワカエデ (羽団扇楓)

カエデ科:広葉樹(落葉)

天狗が持っている羽団扇(ハウチワ)に似ていることからハウチワカエデの名が付いていますが、「メイゲツカエデ」の別名が付いています。これよりやや小ぶりな葉を持つ「コハウチワカエデ」というのがあり、こちらは「イタヤメイゲツ」の別名があり、さらに別の楓に「イタヤカエデ」があります。オオモミジやイロハモミジに比べ葉の裂け目の数が多く、またその深さが浅いのが特徴です。

バッコヤナギ (跋扈柳)

ヤナギ科:広葉樹(落葉)

ヤナギは400種あるといわれ、その中では「ネコヤナギ」や「シダレヤナギ」がよく知られていますが、これは「バッコヤナギ(跋扈柳)」です。日当たりの良い崖などの土地に多く見られ、まれに15m程度まで成長します。早春に黄緑色のネコヤナギのような花をたくさんつけるためその存在がよくわかります。別名を「ヤマネコヤナギ」といい、学名に「bakko」と付いているように日本固有種です。「バッコ」は、この葉を好んで食べる牛のことを東北弁で「ベコ」と呼ぶことに由来するものだそうです。(諸説あり)材は淡い黄褐色で適度な軟らかさを持つため、まな板などの器具に使われます。

樹皮

ハリエンジュ (針槐)

マメ科:広葉樹(落葉)

ニセアカシアの別名がある北米原産の樹種です。明治の初め頃に日本に持ち込まれ砂防目的などで植えられましたが非常に繁殖力が強く、いつの間にか野生化し他の樹種を駆逐しようとしている山林もあるほどです。このため「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定されるほど嫌われ者になってしまいました。エンジュ(イヌエンジュ)ほど材木的な価値はないようですが、虫たちにとっては5月頃咲く香りのよい白い花は蜜源として重要な存在です。葉はかわいい楕円形の奇数羽状複葉で、実はネムノキと同様、マメ科らしく、さやに包まれ秋になると茶色く色づきます。

若木

ハン (榛)

カバノキ科:広葉樹(落葉)

ここではハンノキの仲間のヤマハンノキのことです。ハンノキは湿った低地などに、ヤマハンノキは山林の崩壊地など、どちらも土地の痩せた所に進出してきます。これはハンノキには根の周りの根粒菌と共生して空気中の窒素を固定し肥料とする能力があるためで、このおかげで痩せた土地でも高木になることができるそうです。ハンノキの材の特徴として、伐採直後の切口やスチームに当たった面はすぐにオレンジ色に変化してきます。

木口
樹皮

ヒトツバカエデ (一葉楓)

カエデ科:広葉樹(落葉)

カエデなのに葉の切れこみが全くなく、シロウトではモミジの仲間だなんてことはわかりません。カエデ科の仲間は葉が対生(樹木用語説明を見てください)であること、果実はプロペラ状のもの(翼果といいます)が付くことが共通しています。近畿地方以北の本州に分布しブナなどが見られる山地で生育します。秋には鮮やかな黄色に黄葉する小高木です。

樹皮

ヒノキ (檜)

ヒノキ科:針葉樹(常緑)

火を熾すときにこの木の枝を使ったことから「ヒノキ」の名がついたとか。葉の写真でおわかりのように裏側の気孔が白くアルファベットの「Y」の文字のように見えます。ヒノキによく似た「サワラ」はこれが「X」の文字にように見えるので区別できます。(「サワラ」参照) 尾根は松、谷は杉、その中間の土地に多く植林されます。当地方では「東濃ヒノキ」の名で有名です。下呂地域の人工林でも代表的な樹種です。材質は薄いベージュ、もしくはピンク色で、独特の芳香を持ち、この材も古来から高級建築材料に用いられ、柱を始め、さまざまな部分に使われ、スギやサクラ同様、日本人にとってはなくてはならない木です。

人工林
樹皮
木口

ヒメコマツ (姫小松)

マツ科:針葉樹(常緑)

一般的には、葉が5本(アカマツは2本)あるためゴヨウマツ(五葉松)と呼び、木材関係者は単に「ヒメコ」と呼ぶことが多いようです。尾根筋などに見られますが、分布がアカマツほど広範囲ではなく偏ってそればかり生えていることがあります。樹皮はアカマツほど赤味がなく鱗状に割れ目が入っており、5本の葉も短く軟らかいのが特徴です。これの近種のチョウセンゴヨウマツの実はよく料理に使われる「松の実」です。材は緻密で狂いが少なく、アカマツなどに比べまっすぐなものが多いため、飛騨北部では構造材としてよく使われます。

フサザクラ (房桜)

フサザクラ科:広葉樹(落葉)

多くの種類のサクラがバラ科なのに、この木はそれらのサクラとは無縁のフサザクラ科、フサザクラ属です。花もおしべだけが房のようになって咲くためサクラらしくありません。樹高は10~15mぐらいでそれほど大きな木ではありません。写真のように丸い葉に鋸歯が多くあり、先端だけが長く尖っているのが特徴です。

フジ (藤)

マメ科:広葉樹(落葉)

公園などの藤棚の初夏は花はきれいで、真夏には心地よい日陰を作ってくれますが、山林ではとても憎い存在です。つる性のため高木に巻きつきその強靭な力で締め付けます。巻きつかれた杉などを伐採した後に解いてみると、まるで絞ったぞうきんに付いている手の跡のように幹に食い込んでいます。普段私たちは山に入る時、そのような状態にならないように、見つけ次第ナタやノコギリでつるを切り離します。

花葉
フジに覆われた渓谷

フジキ(藤木)

マメ科:広葉樹(落葉)

あまり知られた樹ではないため「フジ(藤)」の別名と思われがちですが、ツル性ではなく自立する木で15m以上となります。また花はフジが4~5月に紫色の花を咲かせるのに対し、同じマメ科のハリエンジュ、エンジュとよく似た白い花を6~7月頃に咲かせます。 材は淡い黄色で木目は明瞭です。材としてもあまり一般には知られていませんが、いろいろな木工品や器具に使われています。

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