カ行

キブシ (木五倍子)

キブシ科:広葉樹(落葉)

山林の崖の近くや道路沿いのコンクリート吹き付け面近くなどでも良く見られます。株立ちして樹高も2~3m程度であまり目立たない樹種ですが、山が新緑になる前の3~4月頃、房状になった黄緑色の実のような花(「総状花序」といいます)を枝にたくさんぶらさげるので簡単に見つけることができます。「五倍子(ごばいし)」とはヌルデ(ヌルデのページを見てください)の葉にできる、見た目ちょっとキモ悪い虫こぶから採れるタンニンを主とする染料です。キブシの実にもそれに似たものが採れることからこの字が使われています。お歯黒の原料にもなったそうです。

樹形

キリ (桐)

ゴマノハグサ科:広葉樹(落葉)

初夏に紫色の花が咲き、とても大きなハート形(稚樹は更に大きい)の葉が特徴的です。同じ頃に咲く藤の花が垂れ下がって咲くのに対し、キリの花は上向きに咲きます。キリと言えば桐箪笥(たんす)をイメージされる方が多いでしょう。昔は女の子が生まれるとキリを植え、お嫁入りする時の箪笥にするために伐ったそうです。それほど成長が早い木と言えます。材は極めて柔らかく、日本産の材では最軽量で、カシの3分の1ほどしかありませんが断熱性があり、燃えにくいことから金庫の内張りにも使用されています。吸水性にも優れ、火事の際に箪笥に水がかかっても材が膨張し隙間をなくして炎の熱を遮断するため、家宝を守る重要な家具材として現在でも使われています。中国原産です。

桐箪笥

クサギ (臭木)

クマツヅラ科:広葉樹(落葉)

枝を折ったり葉を揉むと、ビタミン剤のような臭い、またはゴムが燃えるような、あまり心地良くない臭いがすることからネーミングされています。林道脇など日当たりのよい場所に多く見られ高さ3~4m程度になります。
臭い割にはよく利用される木で、特に秋11月頃によく目立つ青い実がなると、これを染料にしたり、根は漢方薬として使います。

樹皮

クスノキ (樟・楠)

クスノキ科:広葉樹(常緑)

有史以前に日本に渡ってきたと考えられる帰化植物です。シナモンも同じ仲間で、他にもクロモジや月桂樹、アボカドなどが同じクスノキ科です。材や葉からは独特の樟脳の香りが強く、成分は防虫剤や医薬品等に使用されます。学名(Cinnamomum camphora)には camphoraという文字が付いてますが、これは心臓の働きを強くする注射に使われる「カンフル」が幹材や葉に含まれていることに由来しています。岐阜県飛騨地方では街路樹以外ではほとんど見つけることはできませんが九州では神社などの他、天然林でも見ることができます。とても大きく成長する樹種で日本の巨木ベスト10のうち8本をクスノキが占めています。

樹皮
樟脳

クマシデ (熊四手)

カバノキ科:広葉樹(落葉)

当社の天然林では多く見られる高木で、20m以上になるものもあります。樹皮は灰褐色で、縦縞模様がありますが、亀裂状ではなく波打つように入っているのが特徴的です。シデにも「イヌシデ」「アカシデ」「クマシデ」など種類が多く、それぞれ樹皮の模様の濃さが違うようですがちょっと見分けがつきにくいものもあります。
材質的には、乾燥時に割れが入りやすく、やや扱いにくい材です。

クリ (栗)

ブナ科:広葉樹(落葉)

幹の皮だけ見るとナラと区別が付かないほど良く似ていますが葉の形で区別が付きます。通常、食用として売られている栗は栽培された木からのもので、材として用いるのはこのように山に生えているヤマグリ(シバグリ)です。小さいながらも実をつけ、甘みのある味は食用栗より上かもしれません。材はタンニンを多く含み、水に極めて強く腐りにくいため家の土台や、今はコンクリート製が多くなった枕木に以前は多く使われました。やや黄色味を帯びた淡褐色で年輪がくっきりしているため素朴な雰囲気があります。

樹皮
木口

ケヤキ (欅)

ニレ科:広葉樹(落葉)

ほうきを逆さにしたような樹形で、枝ぶりが美しいため街路樹によく植えられるので日本人にとっては、トチノキ同様とてもなじみの深い樹です。30m以上の非常に大きな木になることがあり、日本各地で銘木となっています。「槻(ツキ)」と呼ばれることもありますが、「ケヤキ」の語源は「けやけき木」という言葉から発生したという説があります。材は、硬く、強く弾力性もあり優秀な材で木目がはっきりしており深みのある色合いのため古くから家の内装、構造材、建具、工芸品など幅広く使われ、寺社仏閣の柱などに見られることがあります。

樹皮
並木

ケンポナシ(玄圃梨)

クロウメモドキ科:広葉樹(落葉)

名前も属する科の名前もあまりなじみのない樹かもしれません。食用になるナツメはこの仲間です。樹木名に「梨」の名がついているのは実を支える柄の部分(左写真)の味と香りが梨に似ていることから由来しています。 材は辺材と心材(写真右の樹皮の下の中心から離れた部分と中心に近い部分)とで極めて明瞭な色の違いがあり、床柱、床板、装飾材、化粧用単板、家具、楽器などに使われます。

樹皮
木口

コウヤマキ (高野槙)

コウヤマキ科:針葉樹(常緑)

天然の檜と同様、尾根筋の高い所に生育します。かつては世界中に分布していましたが北アメリカやヨーロッパでは絶滅してしまいました。岐阜県ではまださほど珍しい樹ではありませんが県によっては純絶滅危惧種に指定されています。当地方での「マキ」とは、この高野槙(コウヤマキ)のことで、枝葉は仏事用としても使われます。材質は軽く白色で美しく、かつ腐りにくいことから、風呂桶、椀など、水廻り関係の物によく使われます。秋篠宮家の悠仁親王のお印(シンボルマーク)でもあります。

木口

コウヤミズキ (高野水木)

マンサク科:広葉樹(落葉)

早春だけというとこの木に失礼ですが、他の木が全く花も緑も見せないまだ冬枯れしている3月下旬ころから「コウヤミズキ」は黄色いシャンデリアのような花をたくさん咲かせるので、この時期だけはとても目立つ存在です。といっても「コウヤミズキ」は当地方(東海地方)で多く見られ、東日本には分布していないとのことです。また、これとよく似た「ヒュウガミズキ」は北陸から兵庫北部にかけての日本海側、「トサミズキ」は文字通り高知県で見られ、それぞれ分布が限定されています。高さ3m程度の低木で山地の崖などによく見られます。

コシアブラ (漉油)

ウコギ科:広葉樹(落葉)

黄色く色づいた葉は半透明で、油を漉し取った後の紙のように見えるのが名前の由来だそうです。葉は5枚の掌状複葉で、春の若葉はテンプラにすると美味で、山菜取りに出遅れるとほとんど取り尽くされてしまっているほど最近は人気が高いようです。灰色で滑らかな樹皮表面で、葉がないとコシアブラと気がつきません。